アンディ・ウィアー著 小野田和子訳の『アルテミス』の感想というか何というか。
新刊が出てるのはネットで知って、「溶接! 溶接!」と一部で盛り上がっていて、よっしゃアンディ・ウィアーだし読んどこ! となって即本屋行ってそのあとインフルを乗り越えて出張の新幹線で読んだ。
知ってる溶接じゃないぞこれ、溶接はしてるけどなんかこれ違うぞ、という違和感があり、アメリカと日本じゃ溶接文化に違いがあるって言うし、訳者さんの苦労も偲ばれるなあ、で片付けようとしたが、やっぱり気になって読み直す。
これは、ガス溶接、だ。
通常、溶接と言ってイメージするのはゴツい面と防護服をつけて、よくわからん棒の先からバチバチ火花を散らしながら金属をくっつけていくアレだと思う、俺だってそうだ。
それは「アーク溶接」バチバチしてるのは手に持った棒=電極と材料の間でアーク放電を起こしているから。
みんながイメージするだけあって一般的に用いられるのはこれ。
「ガス溶接」ってのはアセチレンと酸素を燃やした炎で材料を熱して、局所的に溶かし合わせてくっつけるやり方。実際に見たことはないけど、時間がかかるやり方のはず。火で炙るより高電圧高電流でバチっとやった方が金属だってすぐ溶ける。
危険なのでやっちゃいけない事だけど、コンセントに浅く挿したところへハサミやクリップで短絡させた経験を持つ人数は少なくないはず。そのあとどうなったか見た? ハサミや電極が一旦溶けて固まってなかった?
俺のハサミはなってた、使い物にならなくなった。
一瞬短絡しただけでそれだけの熱が出る。
だからアーク溶接は早い。
えっじゃあなんでガス溶接なの? なんでアーク溶接使わないの?
ちゃんとこれ溶融池できるんだろうか? これ鑞付けにちかいよね。真空中だから熱が逃げないからいいのか? いやしかしだとすると逆に母材の温度上がりすぎないか? あといくら真空中だからって製造過程で酸化被膜出来てない? やっぱり交流TIGのがよくね?
1日考えて結論が出ました。丁度現場溶接の件で出張してまして、これがヒントになった。工場外での溶接というのは一緒。
結論:多分、電気がない。
電気がないとアーク溶接はできない、地球上だとエンジンウェルダー(雑に言うとエンジンでやる発電機)が使えるけど、可燃物の輸入が極端に制限されたアルテミスで使用するのはほぼ不可能だしバカみたいに酸素を食うし。
アルテミスから引っ張るのも多分これ難しい。だってシェルターの外で作業する必要ないもん。都合よくコンセントが付いてるかどうかわかんない。そんな場所での大電力の消費を見咎められないとも限らない。
それからもう一つの理由として、アーク溶接をやるための道具を(結構でかい)持っていかなくて済むメリットがある。太い電線を引きずり回さなきゃならないし。
だから月面で(こっそりと)やるならガス溶接が最適なのです。
間違ってる所があったらツッコんでくれ、そして俺と「アルテミス」の話をしよう。